
(4)適用可能な条件
さて、このようにしてムース化油を現場で焼却処理するに当たって、この方法はどのような状況のときに有効に使えるのだろう。この問題は本法の適用限界と係わるので、第2章で改めて細かく論ずるが、基本的にまずムース化する以前の流出油の種類については、各種の原油は言うまでもなく、船舶の燃料油として使われている重油にも適用可能である。従って、流出した石油が何であってもムース化していれば使用できると考えてよいが、問題はむしろムース化油の含水率にあって、これが著しく大きくなると、処理薬剤やその散布割合に特別な配慮がいる可能性が残る。
一方、本法の適用できる地形や環境に関しては海面上であれば、荒れた気象・海象を除いて適用し得ると思うし、さらに海岸の砂地や岩場でも原理的には利用可能と考えられる。ただ海岸に漂着したムース化油の場合、波打ち際の浅い海面上を含めて実地の検証が行われていないので、今後の検討が必要である。
これに反して、焼却する場所と陸上施設や樹木などの距離、風向・風速といった環境状況についてば、これは後述の本焼却法の技術的展開の枠内の問題ゆえに、ここで特記することは別にない。
(5)本法の特徴
先に第1節でムース化された流出油の処理のためには本焼却処理法が適切で、むしろこれ以外には考えにくいことを記したが、では本法の特徴として挙げられる最大のセールスポイントは何か。最後にこれを前との多少の重複をいとわず列挙してみると次のようになろう。
?操作が簡単で、必要な資機材が少なくてすむ。従って、処理に必要な作業に多人数を要せず、日数も大幅に短縮できる。
?三焼却時の燃焼は制御された火災であり、自ら燃え拡がる危険性はないから、燃える油を燃やすのとは違って作業が安全である。また、焼却処理ゆえ、油処理剤による処理に比べて海洋環境に及ぼす影響は少ない。
?資機材、人的費用を含めた処理費用は他の方法に比べて安価であり、かつ本法は何処ででも対応可能なため地域性がない。
いずれも従来の流出油の防除対策と比べて遜色がないだけでなく、とくに三番目の経済的な効果については、これにより顕著な改善が得られるものと考え
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